ベトナム流フランス建築?
ベトナムの優美なコロニアル建築、それはフランス人だけのものではなかった――今回は特別に民家にフォーカスして今昔を辿る。サイゴンばかりか遠く郊外にもある古びた建物は、外観はフランス風、内部はベトナム流という当時の流行が作らせたものなのだ。
富豪の家系の住まい
ホーチミン市中心部から車・バスで約30分、ニャベー県内フースアン川の近くに昔日の趣を伝える家が建つ。今回は、特別に家主チュオン・ヴァン・ホアン(55歳)氏のご厚意で内部を案内してもらった。1930年に家を建てた祖父ラム・ゴック・ヒュウ氏は当時、近在で有数の富豪だったそうだ。
暑さ対策は万全
このフランス風の家の長所を、ホアン氏はこう語る。「天井が高くて開放感がある。窓が多いから明るいし、通気性が良い。とにかく涼しくて快適な暮らしが送れる」ではベトナム流の部分はどこかといえば、内部に部屋を設けるのでなく、柱で3つに仕切るスタイルがそれだ。これは特に南部で伝統的に採用されている家の建て方なのである。
昔日の証
一通り家を見せてもらった後、ホアン氏が祖父の名刺を取り出してきた。そこにはフランス語でCommercant(商人)と書かれており、遠い1930年代“仏領期”を強烈に感じさせる。サイゴンの今昔は、ひとつの民家にも確かに刻み込まれている。