20?30年ほど前にシックビルディング症候群に関する最初の報告が出されたときに、気に留める医療関係者は多くなかったが、最近では、高層ビルで働く人の多くが喉や鼻の炎症、疲れや目まい、不眠などを訴えている現実があることを否定する医師はいなくなった。建物が高くなるほど、部屋が狭くなるほど、エアコンが多くなるほど、従業員が多くなるほど、病気も増える傾向にある。
エアコンが効いた高層ビルで働く人の生活を追えば、その理由がすぐにわかるだろう。建物の中に出入りする時、身体は大きな温度変化に対応することになる。ほんの数秒の出来事だが、身体はある種のストレスを感じる。
またエアコンの管理保守がきちんとなされていなければ、外と隔離された建物内は細菌の住処となる。さらに建物の清掃に使われる洗浄剤や殺菌剤の化学物質、インクダスト、タバコの煙などあらゆるものが混じりあって循環し、建物内で働く人はさながら各種の保存料にいぶされた「燻製」状態。社内で1人病気にかかると、他の多くの人がかかってしまうことも珍しくない。
ドイツの統計によると、少なくとも70万人が、アレルギーや頭痛、結膜炎、呼吸器の重感染、低血圧による目まい、神経衰弱といった病気で、たびたびの欠勤を余儀なくされており、その80%がオフィスビルで働いている。また同国の医療保険会社の統計によると、時間外勤務のグループでは病人の数が、定時退社のグループに比べ3倍になっている。