人口が増え、都市が発展し、車両の数が過剰に増えることは避けられず、そのため渋滞が発生している。しかしその原因を把握しなければ、渋滞は解決できないかもしれない。
ホーチミン市のその昔、確かに車両の数は今より少なかった。しかし30年ほど前は、1区や3区の中心部だけでなく、他の区でも住宅地や商業地、行政、学校などがバランスよく配置されていた。そしてこの住宅街こそが、車両の「緩衝地」となっていた。20?30年前、市中心部から郊外へ向かうためボン橋、キヨウ橋、ティーゲー橋に行くには、商業活動が行われないエリアを通れば非常に楽だった。
しかし今ではどの家も店舗に変わり、道は市場になっている。10年程前、ファムゴックタック通りなどはそこの住人が行き来するくらいだった。しかし今は、レストランに喫茶店が建ち並び、そこに毎日数百、数千台という車両が出入りする。
建設・営業許可書によって住宅街にはホテル、ビル、レストラン、喫茶店が建つようになり、それが市内の交通バランスを崩し、各区の全ての通りが「市場」と化した現在では、至る所で渋滞が起きている。市内の渋滞は何も車両が多いからではなく、かつての「緩衝地」が、今や車両を集める場所になっているからだ。
世界のどの都市も、都市のバランスを何とか維持しようとしている。それが庶民向けのものであろうと、住宅地に店舗やスーパーの開店を認める都市はない。
経済発展というのは、経営一辺倒ではならず、ましてや、どこでも、どんな形でも経営してよいということでは有り得ない。交通渋滞の解消は、通行料を徴収するといった形だけではダメだろう。毎日走行する車両が主犯ではないのだから。それはその許可書が生んだ結果とも言えるものなのだから。