バックニン省ヴァンモン村クアンド集落には、軍用機・ミサイル・装甲車・戦艦のスクラップを回収し、一山当てた人々がいる。
色黒で白髪頭のロンさんは、この業界では有名だ。現場ではロシア製の航空機IL18が彼の指揮の下で解体されていた。
ロンさんは「この機種ならアルミ4トンは取れるかな」と話すが、実はアルミよりも、導線や接続部など高価な合金が使われている部分の販売が大きな収益源だ。
集落では豪邸や高級車を多く目にする。住民は空き缶などの回収から始め、航空機や自動車のスクラップ業など、利益の高いものに幅を広げてきた。
ロンさんは、「資金は心配ない。一番重要なことは、スクラップが売却されるタイミングと売買に誰が責任を持つかということだ」と話す。
スクラップ業に従事するフンさんは数年前、機関車1両と客車10両を手に入れ儲けたが、その後ミサイルを買い取った時に、表面の銅メッキを金メッキと誤解して大損した。
集落には航空機の解体場が3カ所ある。いずれもハンマーと灯りがあるだけの工場に過ぎず、横たわる巨大な航空機からは焦げ臭い匂いが立ち上り、まるで戦場のように見えなくもない。
事故が起きることもある。数年前、爆弾の解体作業をしていたところ、20人の作業員が突然よろめき、次々と倒れた。中が空だと思い込んだ作業員が、有毒物質が詰まった爆弾をハンマーで打ったことが原因だった。
400世帯が暮らす集落には40の業者があり、それぞれが国内各地に調達網を張り巡らせている。IL18の購入時にはパイロットも雇い、航空機の状態の詳細チェックが行われた。
集落では、親戚同士ならスクラップ調達資金として数十億ドンがすぐに融通されるという。解体したスクラップの販売先もハノイなど近辺にあり、この業界の成長は著しい。
一方で、解体作業による環境汚染も進んでおり、呼吸器や皮膚の障害に苦しむ住民もいる。男性も小柄で咳き込む人が多く、健康不十分という理由から軍も徴兵を見送るほどだという。