ラムドン省ドゥックチョン県ビンタイン村で農業を営むブイ・ヴァン・トゥーさん、チャン・ティ・トゥーイさん夫婦は、50歳を超えながらも各地の精神病患者を引き取り、面倒を見ている。現在は18?50歳の56人(うち女性19人)が夫婦のもとで暮らす。
活動を始めたきっかけをトゥーさんはこう話す。「路上で放浪していたり、家の中に閉じ込められていたり、洋服さえ着ていないこともある精神病の人々を見て不憫に思い、妻と子供に相談し引き取り、社会復帰できるよう支援することにしました」。
農業を営む夫婦の生活は、豊作や不作、農産物価格の変動と苦労続きだった。その日暮らしにも似た生活をしながら時は流れ、2000年に2人の娘が結婚したのを機に、トゥーさんは余暇を利用し医師団体の慈善活動に参加するようになった。
活動を通してトゥーさんは色々な場所で目にした精神病患者に心を痛め、彼らを引き取り面倒を見たいという気持ちを持つようになった。
精神病患者の世話は簡単ではないが、次第に慣れていったと言う。当初は数人のはずだったが、次第に数は増えていった。困窮した生活に、借金せねばならない時もあるが、夫婦が患者の家族に金銭を要求することはない。
2006年10月、ドゥックチョン県はトゥーさんに社会支援施設「チョンドゥック(「重徳」の意)」の設立を許可した。一家が住む家は患者を引き取るのに十分な広さがないため、親類や友人、患者の家族などの助けを得て500?の施設を建てた。
さらに男女別棟にするため、トゥーイさんの姉が土地を提供、部屋を増設した。トゥーさんらは一家総出で患者の世話をしている。施設で患者を部屋に閉じ込めることはなく、自治体も活動を支援し、祭りやテト(旧正月)の際には施設を訪ねてくれる。
夫婦のもとで暮らした患者のうち20人は、健康になり家族のもとへ帰った。夫婦のもとで暮らすホアさん(41歳)は20年前から精神病を患い、各地の病院で診察を受けてきた。
ホアさんの父親は、「効くと聞いたところにはどこへでも行き、お寺を訪ねたこともありました。ですが回復どころか症状は重くなる一方。ところがトゥーさんのところで5カ月も経つと、ホアは70?80%回復し、家に帰ったり、会話や食事、自分で服が着られるようになりました」と話す。
施設の台所では、患者ハイさんがカボチャの皮を剥き夕食の支度をしていた。「ブォンメトート出身で今年26歳。ここへ来て7カ月経ち、健康になりました。とても楽しくて、家に帰りたくないくらいです」と施設での生活を語る。
トゥーさん夫婦は最後にこう話した。「苦労もありますが、とても楽しく感じています。体が動かなくなるまで全力で彼らを支えるつもりです」。