骨董品蒐集家ナム・フオンさんは、価値のつけられないという贈物を、日本から受け取った。
フオンさんが、涙ながらに話してくれた。
彼女と3人の日本人は、ビジネス関係を通じて知り合い、骨董品蒐集という共通の趣味があり、親しくなった。
しかし今回彼女はこの贈物を、痛ましい気持ちで受け取ることになった。この貴重な品物の持ち主である日本人の友人Mさんが、このたびの地震と津波で行方不明となり、いまも消息が不明のままという話を聞いたからだ。
彼女によると、3人の友人はいずれも独身で、なかには1945年の広島の原爆被害者もいる。行方不明になったMさんは、津波にのまれた可能性もあり、残る2人はフオンさんに、彼らが集めた貴重な骨董品を全て贈ることに決めた。彼女がこれを保管し、後に民間博物館を作るためだ。
日本人2人は、ボランティアで日本の北部に行き救援活動にも参加した。危険を顧みず、被曝し生命に影響を及ぼす可能性もあったが、2人とももう80歳近く、生命は惜しくなかった。
ナム・フオンさんが受け取った骨董品は、明治時代の時計1点、銅製の香炉1点、各種の壷11点。ホーチミン市の研究者によると、1,000年以上前のものもあり、ベトナムの博物館には所蔵されていないものも含まれている。
彼女はいま、世界各国から集めた1万点ほどのコレクションがあり、これを展示・紹介する民間の博物館を建設したいと思っている。「あと数年してビジネスが落ち着いたら、博物館を建設するつもりです」とナム・フオンさんは話している。