日本で安定職に就いていながらも、国際協力機構(JICA)のボランティア事業に参加、ベトナムの社会施設で暮らす子供達のために働く若者がいる。
渡越前の3カ月間で学んだ少しのベトナム語は、ドンナイ省孤児・障害児養育センターで働く理学療法士Inoue Nanakoさんが子供達に接するには十分なものだ。
静かな音楽が流れるセンター。ベッドでグエットちゃんが体を曲げ咳をしていると、痰で呼吸しにくくないようNanakoさんが急いで補助する。タオルで顔を拭き、こわばらないよう両手をさする。彼女が落ち着いたのを見て、下のマットで横になっているアインちゃんとフックちゃんのところへ。抱えられ歩行訓練ができるとあり、アインちゃんは笑顔で声を発していた。
Nanakoさんは、脳性麻痺の子供は何も知らないわけではなく、愛情を感じることができると話す。リハビリ室に連れて行き、様々な人と親しくなるとよく笑うが、ずっと部屋にいるとつまらなく感じ笑わない。フックちゃんは見知らぬ人を見ると横になってすすり泣き、守って欲しいと言うように小さな手を上げNanakoさんを呼ぶ。抱いて笑顔で可愛がると、泣きやみ、頭をお腹にこすりつけてくる。
リハビリ室には、それぞれの子供のリハビリ内容を記した日記があり、Nanakoさんが子供達に練習させた内容を記している。そこには子供達の人生の息遣いが感じられた。
センターにいる70人の子供のうち、50人は継続的なリハビリが必要だ。マオ・クオック・チュン副所長は、今回がこの6年間で3回目の日本人ボランティアの受け入れとなり、多くの訓練技術や子供のケア技術を教えてもらっていると話した。
美術教師Okudaira Yuriさんはドンナイ省障害児養育センターで働いている。耳が聞こえない子供たちに、言葉で指導する代わりに絵で伝える。可愛い絵で教師への気持ちを表現したり、アオザイを来た日本人女性や枝に止まる鳥の絵を描く子供もおり、Yuriさんも子供達に愛情をよく伝えている。
Yuriさんは日本人医師が支援し分離手術を受けたベトさんとドクさんの話を聞いてから、ベトナム人に対し親しみを感じていたと話す。ベトナムで2回のテト(旧正月)を迎え、日本人ボランティア達は楽しさあふれる春に小さな夢を分かち合えたと感じている。