「ここで学ぶあなたたちが知識を身に付けるだけでなく、人に慈善活動を行えるようになることを願い、日本語を教えています。しかし1人では何もできません。あなたたちは真面目に学習しなければなりません。教室での私語や人をからかうことは厳禁です。お互いを兄弟姉妹だと思い、向上心を忘れず、助け合わなければなりません」。
タオサック寺(ハノイ市タイホー区ラックロンクアン通り)の日本語教室で、先生を務める僧チック・ドゥック・ミン氏が生徒にかけた言葉である。
寒空の午後6時、タオサック寺は温かい空気に包まれ、生徒たちの笑い声が響いていた。数分後、彼らは寺の倉庫だった15?ほどの部屋に整然と座った。ミン日本語教室の始まりだ。
「教室のみんなを1つの家族だと考えています。勉強だけではなく、困難に直面すると、お互いに助け合っています。月・水・金の夜はバスでドンアインからここまで来ています」。こう笑顔で語るのは、ハノイ市のドンドー私立大学2年生のフオンさんだ。
ハノイ工業大学管理学部2年生のタンさんは「規則は厳しいですが、先生の話しはとても分かりやすくみんな一生懸命勉強しています。忍耐の心や責任を持って生活すること、親愛の心や分かち合いの精神も学ぶことができます」と語る。
ここでの授業は、ハノイ大学日本語学部のカリキュラムとほぼ同じもので、同学部長が顧問を務めている。最新の教科書や指導方法は、ドゥック・ミン氏が日本の友人から入手している。
教室を始めようとしたドゥック・ミン氏には、多くの人が支援を申し出てくれた。最初に住職のチック・グエン・ハイン氏が手助けしてくれ、優秀な学生が講師に名乗りを挙げてくれた。
教室では生活が困難な人々の苦しみを分かち合う活動もしており、旧正月や中秋の時期にはドンアイン県の社会支援センターやグエン・ディン・チヨウ学校の目の不自由な人々を訪ねた。これに参加したハノイ大学1年生のランさんは「教科書やノートには書いていないことをたくさん学びました」と話す。
ミン氏の日本語教室は2007年4月、20人の生徒から始まった。現在、この教室はホーティエン寺(ドンアイン県)、ニャッタン高校、タオサック寺(ハノイ市タイホー区)に3つのクラスが設けられており、これまでに約300人の生徒が巣立っている。