ベトナム訪問を皮切りに東南アジア外遊する日本の安倍晋三首相。アナリストは、日本が新たな役割を持って回帰しようとしていると分析する。
■東南アジアでの存在感
選挙戦で安倍氏は、日本外交の復活を宣言した。シンガポールS.Rajaratnam School of International Studies(RSIS)の政治・経済専門家によると、安倍首相の訪問は日本の東南アジア回帰を示すもので、2009年にアメリカはアジアへ軸足を移すと発表したヒラリー・クリントン国務長官と同様のものだ。「日本は新しい役割を認識し、東南アジア地域での協力に貢献しなければならない。さもなくば、日本は衰退する」とRSISの専門家は言う。
この新しい役割とは何か。RSISの専門家によると、東南アジアで日本は大きな貢献をしてきた。日本は20世紀まで、東南アジアのメインパートナーであり発展の旗振り役となってきた。
日本の対東南アジアODAと外国直接投資(FDI)は数千億ドルに上り、輸出志向経済の構築に貢献した。1980年代、日本の多くの多国籍グループが東南アジアに生産拠点を設け、日本からの投資は雇用創出のみならず、技術移転にもつながった。
政治面で日本は、1994年のASEAN地域フォーラム(ARF)設立を支持し、ASEANが主導するアジア太平洋地域における多国間の安全保障協力を受け入れることでアメリカを説得した。アメリカは当初、アジアの安保パートナーとの二国間の安全保障合意しか望んでいなかった。
しかしこの10年、日本は中国に立場を奪われ、中国は東アジアにおけるASEANの最重要パートナーとなり、東アジア地域の協力で中心となっている。貿易面でも日本は中国に遅れをとり、中国はASEANと自由貿易協定を結んだ最初の国となった。
日本は、地域で最も重要なODA・FDI国であり、ARFでも最も主体的なパートナーのひとつでもある。しかし、中国がアジアで経済・軍事面で影響力を拡大して以降、日本の存在感と影響力は薄れつつある。その日本がいま、フィリピンやベトナムといった国々と戦略的パートナーシップを築き、東南アジアの国々と戦略的協力を強化し始めている。
■各国と協力で中国を牽制
共同通信によると、日本の新外交政策は、地域の安定を目指し、ASEAN、インド、オーストラリアを含むアジア太平洋諸国と二国間、多国間関係の構築に取り組むことである。
日本の回帰における重要な目的のひとつに中国の牽制がある。援助や経済活動を通じた影響力拡大のほか中国は、南シナ海で不法に主権を求める動きを見せている。経済と人口のアドバンテージから中国が小国を圧倒するのは簡単だ。アナリストは、中国の独り舞台を抑える大国の出現が極めて必要だと指摘している。
「多くの国が日本とより親密な関係を築くことを望んでおり、我々はそれらの国との協力を強化する」と安倍首相は明言している。日本も中国と尖閣諸島の主権を巡り対立しており、安倍首相は、中国の海洋政策に懸念する国と安全保障協力を強化することを提案している。日本はオーストラリアとインドと安全保障協力に関する共同宣言に署名しており、地域での安全保障協力を拡大していく。
初の外遊先に東南アジアが選ばれたことは、地域に対する日本の経済的な優先を示すものでもある。尖閣諸島の緊張から、日中間の貿易と投資環境は深刻に悪化している。日本企業界は、東南アジアとの関係促進が経済回復における新たな解決策になると期待している。