子供の自殺・集団自殺が発生し心のケアの必要性が指摘されている。
2月16日、ゲアン省ヴィン市私立レクイドン高校の3年生Tが、川から遺体で引き上げられた。Tが自殺を図ったのはその10時間前、ハノイで音楽を学ぶ男子学生への恋心を記した遺書が残されていた。
この男子学生には恋人がおり、バレンタインデーに一人でいる孤独を感じたことから、全てを終わらせるために自殺を決めたという。
その10日後の26日午前11時ごろ、クアンナム省の高校で授業が終わった直後に2年生の生徒が4階から飛び降りる事件が発生した。生徒は翌日に死亡したが、原因はまだわかっていない。
1月にはホーチミン市クチ県で中学3年生2人が服薬自殺を図った。幸いなことに家族が発見し一命を取り留めたが、喫煙を教師に見つかり名前を公表されたことに怒りを抱いていたことが原因だという。
これらの事件から見えてくるのは、子供達が感情を内に閉じ込め、勉強によるストレスや、自分の存在を尊重されないことなどから憂鬱になり、やがて自殺に向かうという傾向だ。
ハノイの男子高校生Vは、髪が長いので切るように教師から注意を受けていた。放課後Vは酒を飲んで酔っ払い、部屋を施錠し音楽をかけたうえで、ナイフで血管を切った。発見が早かったため、悲劇は免れた。ゲームをする金欲しさにコーヒーを盗んだことを叔母に咎められたという理由で、生ゴムの樹脂を茶碗1杯飲み自殺を図った中学3年生もいる。
ここ数年、友人から恐喝されたりグループ内で疎外感を感じたという理由により自殺を選ぶケースや、教師や親の発言が引き金となり集団自殺を起こすケースなど、心理的な閉塞感からパニックに陥り自殺を図る子供が非常に多い。
世界保健機関(WHO)は、アジアで1日平均1,100人超が自殺で死亡していることを大きな問題と位置付けている。自殺を図る人数はその20倍で、多くが未遂で終わっている。
日本、韓国、中国と並び、ベトナムも自殺、特に児童による自殺が多い国のひとつだ。心理学の専門家には家族、社会、友達とのコミュニケーションがうまくとれていないことが原因とする意見もある。
最近は親が子供の成績を必要以上に重視する傾向が見られ、内面や夢につながる考えを汲み取ろうという努力をおろそかにしている。お金で子供を管理しようとする親も多い。これによりコミュニケーションはなくなり、多くの子供が心の渇きを感じるという危険な状況に陥っている。
豪メルボルン大学がベトナムの保健機関と共同で行った、ハノイの生徒の心の健康に関する研究では、どの学校にも心に問題を抱える生徒がいることが分かった。心に何らかの引っ掛かりを感じている子供は15.94%。
自殺者の年齢は10?17歳が10%を占めている。ハノイの青少年1,290人を対象にした調査では、3.7%がパニック行為を起こした経験があることが分かった。さらに10?16歳の1,200人を対象にした調査では、19.46%が心の問題を抱えていることが明らかになった。